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郊外・シニア住宅が高騰

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)、有料老人ホームといったシニア住宅のマーケット売買価格が上昇している。アベノミクス・金融緩和の影響もあるかもしれないが、その多くは郊外や地方、しかも駅から遠い場所にあるにもかかわらずである。

「オペレーショナル・アセット(運営型不動産)」といわれ、オペレーター(運営事業者)次第で評価が決まるとされるが、大手不動産鑑定事務所のヘルスケアチームによると、キャップレートは、都区部で昨年5%前半~半ばだったものが4%半ば~後半に、その他首都圏や地方でも5~6%程度に低下しているとのこと。

昨年11月、本邦初のヘルスケアリートとして上場した大和証券系の日本ヘルスケア投資法人に続き、先週、三井住友銀行系ヘルスケア&メディカル投資法人の上場が承認され、来月の上場が発表された。これらに加え、ケネディクス・新生銀行系が上場を計画しているほか、レジデンシャルリートや、総合リート、シンガポールのリート・ファンドなどがシニア住宅の取得に動いており、プレーヤーの増加に伴う取得競合が価格を押し上げている。

デベロッパーによるサ高住開設が相次いでいるほか、有料老人ホームは大小あるとはいえ、年1000件のペースで増えている。
建築費高騰、介護スタッフ確保といった問題に直面しているものの、開設後の稼働率は80~90%。社会ニーズに応えた成長分野となっている。ただし、流動化の対象となるのはその一部であり、1施設当たりの資産価値は数億~10億円前後が中心と大きくはない。

昨年登場したヘルスケアリートだが、成長戦略は、視界不良といわざるを得ない。そこで、期待されるのが病院である。病院アセットは、資産規模数十億円と一回り大きい。国土交通省は近く、病院を対象とする証券化ガイドラインのパブリックコメントを示し、3月にはガイドラインをまとめる。流動化を本格化するインフラが整えられ、病院アセットは、ヘルスケアリートの成長ドライバーとみられている。

ところで病院サイドには、流動化ニーズ、資金調達ニーズがあるのかどうかだが、リート、ファンドに対する警戒感が存在し続けているのも事実である。いったん施設所有権を譲り渡してしまえば、経営の自由度が狭まると考えるのはおかしなことではない。ガイドラインをつくる背景には、リートと病院との相互理解を深める狙いもあると聞く。

資金ニーズを巡っては、かつてバブル期、病院建設ラッシュが起こり超長期の過剰融資が行われた時代から、00年代に入り小泉改革で診療報酬が初めてマイナスとなり、「誰でも儲かる」という時代は終った。このため赤字病院が増え、不良債権を生み、融資は短期資金に切り替わり、調達のハードルが上がった。

今日でも地域医療機関に積極的な地域金融機関はあり続けるが、大がかりな借り入れを起こせば、その後の資金繰りで逼迫するケースが少なくない。特に病院建替えの場合、旧病棟の残債を返しつつ、新病棟には高度先進医療が求められ、資金規模が膨らむ。築25~30年の病院建かえは今後増え、ここに流動化スキームによる調達が必要となる。

実際、建かえにあたるのは企業不動産(CRE)戦略を支援するコンサルや、デベロッパーの立ち回りとなるだろう。その後、必要に応じ流動化に進み、ファンド、リートへ道が開かれる。

建かえなど、開発が病院流動化のスイートスポットとなる。注意を要するのは、病院の経営実態がよくわからないことだろう。病院自身がわかっていないこともあり、病院の財務、法務、不動産など、専門家によるデューデリジェンスなしには意思決定がままならない。

このほか、クリニックを集合させた医療モールも注目されている。一部デベロッパーも取り組み、健康産業を組み入れ、「健康モール」とするケースが見受けられる。

本場・米国リートにおいて、一定シェアを持つヘルスケア。課題先進国・日本でも、リート、デベロッパーとも、もはや無視できない存在となっている。Jリートの登場でシニア、ヘルスケアは、疑いなく不動産の成長分野に位置付けられたといえる。

今後のキーワードである「シニア」。相続・贈与対策としてタワーマンションや、銀座の収益物件が売れているが、富裕層ではなくても、住替え、証券投資、リバースモーゲージなどが見込まれる。

また、同じく成長セクターとされる「観光」でも、その押し上げ要因は訪日客よりシニアである。シニア住宅とリゾート、健康施設(フィットネス、スパなど)の親和性は高いとされている。

さらに、アベノミクスが取り組む労働改革で、「女性活躍」は良いとしても、シニアや若者の活躍こそがポイントとなる。

成長の源泉は、事業である以前に、人的資源(ヒューマンリソース)。人材マネジメントがベースとなり、女性活用だけではないダイバーシティ・マネジメントが問われる。

ワーク・ライフ・バランスにしても、継続雇用シニアをターゲットに据え、大きな成果を引き出すべきである。絵になりづらいからか、華々しさはないが、当面、少子高齢化社会をリードするのはシニアである。シニア抜きにはビジネスできない日がもう来たのかもしれない。

(提供:日刊不動産経済通信)

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