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高まるシェアハウス人気、賃料高めでもサービス充実

玄関や居間、水回りを共有する賃貸住宅「シェアハウス」の人気が高まっている。賃料自体はそれほど安いわけではない。いろいろな人とコミュニケーションをとりたい人の需要を取り込み、部屋数も増加傾向にある。大都市圏で高水準にある共同住宅の空室を解決する手段としても有効という見方も多い。

7月9日、東京都昭島市。JR東日本と西武鉄道が乗り入れる拝島駅から徒歩8分の距離にあるシェアハウス「ソーシャルレジデンス福生拝島」では、新しく入居した人を歓迎するパーティーが開かれ、ラウンジに入居者が集合した。

新入居者の歓迎パーティーを定期的に催す(東京都昭島市のソーシャルレジデンス福生拝島)

 

新入居者の歓迎パーティーを定期的に催す(東京都昭島市のソーシャルレジデンス福生拝島)

■全国に2万2000部屋

ソーシャルレジデンス福生拝島はもともと電機大手の社員寮で、築年数は30年。シェアハウスを運営するオークハウス(東京・渋谷)が借り上げたうえでリノベーション(大規模改修)をして2014年にシェアハウスとしてオープンした。定期的にこうしたパーティーを開催し、入居者が交流を深める。およそ160室あるソーシャルレジデンス福生拝島はほぼ満室だ。入居者は20~30歳代が多い。家賃は月3万5000~5万円。拝島駅周辺の同様な築年数のワンルーム住宅と比べると1割ほど高い。ただここを含めシェアハウスの多くは敷金や礼金が不要で、新しい住まいを求める人にとってハードルは必ずしも高くない。

入居する砂賀太郎さんは「英語を話す外国人も多く、英会話の勉強になる」と話す。入居者の性別や年齢、職業、国籍など属性も様々で、情報交換の場にもなる。同じく入居する世古翔子さんは、仕事の関係で長野県から東京に来た。「常に誰かいてくれることは心強い」とシェアハウスに入居を決めた理由を話す。

オークハウスが運営する「ソーシャルレジデンス」は東京、神奈川、千葉、埼玉に16カ所ある。平均稼働率は93.01%と高い。シェアハウス紹介サイトを運営する、ひつじインキュベーション・スクエア(東京・渋谷)によると、全国のシェアハウスの平均稼働率は90%前後で、ソーシャルレジデンスはこれを上回る。国籍や職業、収入による制限はないことや、保証人や保証会社がいらないことなども魅力のようだ。オークハウスの山中武志社長は「外資系企業と組み、世界展開していきたい」と将来構想を話す。

全国のシェアハウスの数は増えている。日本シェアハウス協会(東京・杉並)によると、2015年の部屋数は2万2000部屋ほど。前年と比べて5%前後増えた。同協会の山本久雄会長は「最近は新築物件も増えている。玄関や台所が1カ所であるため、(同規模のアパートと比べると)建築費が2割ぐらい安くできることもある。面積が同じなら部屋数を増やせるため、収益性もよい」と話す。シェアハウスは現在、戸建てが多いが、マンションやアパート、社宅を活用する事例も増えてきている。山本会長が代表取締役を務めるシェアプロデュース(東京・杉並)が指導した企業が運営するシェアハウス「プリエ阿佐ケ谷」(同)では今後、民泊の研究や試行も行う予定だ。

シェアハウスを運営しようとする物件所有者も増えている。その要因は賃貸住宅の空室率上昇だ。不動産調査会社のタス(東京・中央)によると、4月末の東京都のアパートの空室率は33.04%。前年同月末と比べて3.18ポイント上がった。これだけ空室率が上昇しているのは、相続税対策でアパート建設が増えたのが要因としてあがる。15年1月に税制が改正され、更地よりも賃貸住宅が建っている土地の評価額が下がり、節税策となる。日銀が2月に実施したマイナス金利の影響で、貸出金利が下がった銀行が需要が増えているアパートローンを強化したこともアパート建設に拍車をかけたもようだ。空室が増えれば、所有者は賃料収入が見込めない。空室を減らして賃料収入を得るためには物件の魅力を高める必要がある。シェアハウスはその一つの手段として注目を集めているのだ。
■アパートの平均を上回る賃料収入

入居者側の要因もある。地方から東京に来る若年層にとって家賃負担は重い。敷金や礼金がないうえ、家賃が光熱費込み、というシェアハウスもあるため生活費抑制も期待できる。

他の物件との差を明確にするため、シェアハウスの多様化も進む。入居者を男性に限定して、外装や内装を男性が好むような色にしたり、高齢者に特化したシェアハウスも登場したりしている。化粧品のサンプル提供など美容サービスを充実させた女性専用シェアハウスや、入居者や周辺に住む人に子どもの一時預かりを頼めるサービスも出てきた。

シェアハウスの数が増えても賃料相場は下がっていない。不動産サービス大手、アットホーム(東京・大田)の岩田紀子氏によると、東京都のワンルームアパートの賃料は空室率の高さが影響して下がる傾向にある。半面、シェアハウスは「ほぼ横ばいで推移している」(日本シェアハウス協会の山本氏)。東京都のワンルームアパートの平均月額賃料は7万5000円前後とされるが、物件ごとに管理人が常駐するほか、共有スペースを充実させるなど付加価値を高めることで、アパートの平均を上回る賃料収入を得ているシェアハウスもある。大阪府など関西圏では東京に比べてシェアハウスが少ないため、賃料相場も底堅く推移している。

シェアハウスを紹介するサイトも多い。05年にサイトを立ち上げた、ひつじインキュベーション・スクエアは、サイトに掲載する物件をすべて訪問している。物件写真も掲載。北川大祐マネージャーは「サイト利用者に違いが伝わるように撮影している」と話す。サイトの主な収入源はシェアハウス情報の掲載料金だ。同社は1棟が数万円の場合もあり、他社と比べ安いとしている。北川氏は「安易な料金引き上げはない」という一方で、シェアハウス市場を拡大させるためには、サイト運営を続けていく必要があるとも話す。北川氏は「どういう入居者を集めて、どういうコミュニティーをつくるかが、シェアハウス運営会社にとって重要になってくる」と話す。

今後、シェアハウスの数がもっと増えれば、品質の差が広がる可能性もある。入居者に選ばれるには、利用者が求めるサービスをいち早く把握していく必要がある。

日本経済新聞(商品部 斎藤公也)

 

 

 

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