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重大ニュース 好調な中に変化の兆し

令和へ変わった今春、「不動産の最適活用」を掲げた「不動産業ビジョン」が発表され、新しい不動産の価値を創造すべく、今後の住宅・不動産業の道標として示された。二度の延期の上、軽減税率が初導入されて消費税が増税された。住宅への軽減税率適用はなく、負担感が一段と高まった。自然災害が多発し、改めて安全・安心の尊さを実感させられた。そうした住宅・不動産業界のこの1年を振り返った。

消費増税 住宅受注に陰り

10月1日に消費税の税率が8%から10%に引き上げられた。住宅業界では駆け込み需要とその反動減が懸念されていた。政府も需要・消費の平準化を目的に(1)住宅ローン減税の拡充、(2)次世代住宅ポイント制度の創設、(3)すまい給付金の拡充、(4)贈与税非課税枠の拡大――といった関連施策を実施。増税による戸建て受注への影響は前回の8%引き上げ時(14年4月1日)に比べて、駆け込みも反動減も半分程度、という意見が業界では主流だ。

物件引き渡しが10月1日以降でも、3月末までの請負契約なら税率8%適用の経過措置が施された。住宅生産団体連合会は大手ハウスメーカー(8社)の戸建て受注が4月以降落ち込み、5月からは前年同月比で10%前後のマイナスで推移していることを指摘。持ち家の着工戸数も8月以降、前年同月比でマイナスに陥っている。

次世代住宅ポイント制度は省エネ性や耐震性などを満たす住宅、家事負担の軽減に資する住宅の新築やリフォームを対象に、様々な商品と交換できるポイントを発行するもの。事業予算枠は新築が1032億円で、リフォームが268億円。11月末時点の活用状況(累計)は新築(予約申請含む)が108億9800万ポイント、リフォームが4億1473万ポイントの発行にとどまる。

懸念されるのは住宅需要がこのまま低迷することだ。8%引き上げ時では持ち家着工戸数は14年度が前年度比21.1%減。15年度が同2.2%増、16年度が同2.6%増と回復に時間が掛かった。今後の受注推移によっては更なる支援策が求められる。

四半世紀ぶり不動産業ビジョン

4月24日、不動産業に関わるすべての主体に向けて国土交通省が示す中長期的指針「不動産業ビジョン2030」が策定された。86年と92年に続き、27年ぶり3回目のビジョン策定となる。

土台となる考え方は、時代の要請や地域のニーズを踏まえて不動産価値の創造を最大化する「不動産最適活用」だ。空き家や空き地、所有者不明土地の増加といった社会的変化を前提に、ストック活用や安全安心な取引、地方創生など、官民で目指すべき不動産業のあり方を提示している。

また官の目指す市場環境整備や政策課題、業界への指導・監督方針を整理し、民の役割としては法令遵守や「多様化するニーズに応えられる〝トータルサービス〟」を求めるなど、具体的な内容は多岐にわたる。今後、国が実現を目指す不動産関連政策の方向性を示すものといえる。

引き続く不正問題

18年は免震・制震製品メーカーの検査データの改ざんが発覚したが、19年に入っても、大和ハウス工業の建築基準法不適合物件、長期固定金利住宅ローン「フラット35」の不正利用、TATERUの融資資料改ざんなどが判明し、不正問題が相次いだ。

18年のスマートデイズとスルガ銀行によるシェアハウス「かぼちゃの馬車」や、レオパレス21の施工不備の問題では、サブリースや賃貸管理業務のあり方が問われた。

そこで、19年に大きな動きがあった。賃貸管理業界で「21年度までの実現」と初めて明言し、適正化を図る賃貸管理業の「法制化」と、その重責を現場で担う賃貸不動産経営管理士の「国家資格化」の気運を大いに高めた。

マンション管理〝見える化〟へ

分譲マンション管理が注目を集めた年だった。建物の老朽化と居住者の高齢化という2つの老いに対応するため、業界団体や官民が管理状況の〝見える化〟に動き出した。

マンション管理業協会の呼び掛けで発足した業界11団体による「マンション管理適正評価研究会」では、12月までに4回の会合を開き、管理状況に関する情報が登録されたデータベースや等級評価の仕組みづくりについて議論を重ねた。優良な管理状況のマンションが評価される市場形成が狙いだ。こうした流れは民間企業でも進み、さくら事務所は9月下旬、中古マンションの管理状況を独自基準で評価し、一定水準を超えた物件のみを掲載するサイトを開設。日本マンション管理士会連合会とライフルは、実施した共用部の管理状況評価を、ライフルの物件情報サイトに掲載することで合意した。

行政も、高経年マンション増加を見据えて管理不全を未然に防ぎ、良質なストックを形成する維持管理の適正化や再生に取り組み始めた。東京都は3月、「マンションの適正な管理の促進に関する条例」を施行。来春からは一定の管理組合に管理状況の届け出を義務化する予定だ。神戸市も同様の問題意識のもと、検討会を始めた。また、国土交通省も社会資本整備審議会住宅宅地分科会のもとに小委員会を設け、マンションの維持管理の適正化方策などを検討した。「管理の見える化」が、中古市場にどのような影響を与えるのか注目される。

首都圏・新築の高値続く

首都圏の新築マンション価格は、建築費の高止まりやマンション適地の高騰を受け、今年も高値が続いた。不動産経済研究所の調査によると、1~11月の1戸当たりの平均価格は6006万円で、前年同期と比べて2.4%上昇。価格の高止まりで、購入検討者は中古住宅も視野に入れながら慎重に物件を選ぶようになり、売れ行きは鈍い。供給側も資料請求などの状況を見つつ、数戸ずつを売り出す期分け販売など、長期戦を前提とした販売手法が常態化。そのため同社の予測では、19年(1~12月)の供給戸数は前年比15.7%減の3万1300戸程度にとどまるようだ。

五輪選手村の販売開始

20年の東京オリンピック・パラリンピックの選手村として活用後に、先進的な街づくりを目指す「HARUMI FLAG」(東京都中央区晴海5丁目、分譲・賃貸合計で23棟5632戸)の第1期販売が行われた。

7~8月に第1期1次販売(600戸)、11月に同2次販売(340戸)が実施され、同1次販売の倍率は約2.57倍だった。販売平均坪単価は302.6万円(最高は507.1万円、最低は241.6万円)だった。

大型再開発が相次ぎ始動

東京では、五輪後竣工を予定する大型再開発プロジェクトの着工や計画が相次いだ。

虎ノ門エリアでは、2つのプロジェクトが相次いで着工した。8月5日に着工した「虎ノ門・麻布台プロジェクト」は、8.1ヘクタールの広大な敷地に、森ビルがこれまでの「ヒルズ」で培った全ノウハウを注ぐ旗艦プロジェクトで、緑と広場が大きな特徴だ。同社が11月25日に着工した「虎ノ門一・二丁目地区第一種市街地再開発事業」は、東京メトロ日比谷線の新駅「虎ノ門ヒルズ駅」と一体となった再開発。タワー棟最上階にビジネス交流施設を設けるなど国際ビジネス拠点化を目指す。いずれも23年の竣工予定。

東京・日本橋エリアでは、首都高速の地下化に伴う大規模再開発の計画が明らかになった。三井不動産は、8月29日に日本橋再開発で重点構想を公表。日本橋川沿いの約2万坪にオフィスや店舗を整備する計画(写真)。35~40年頃の完成予定だ。東京建物は、「(仮称)八重洲一丁目北地区第一種市街地再開発事業」が10月に都市計画決定。日本橋川沿いに金融拠点を整備する計画で、25年度着工を目指す。

これらの大型再開発は、竣工時に経済・社会にどのようなインパクトを与えるのか、注視すべきだろう。

新潮流、サブスクリプション

消費者意識が「モノ消費からコト消費へ」「所有から利用へ」と変化しつつあることなどを背景に、定額制のサブスクリプションサービス(サブスク)が不動産・住宅業界でも注目を集めた。

アドレス(東京都千代田区)は地方の空き家を再生し、月額4万円から多拠点での〝住み放題〟を提供する。「観光業による交流人口の創出ではなく、地方への移住・定住と観光の中間となる関係人口づくりが狙い」(同社)とし、地方活性化を目指す。

スマートフォン1つで物件探しから契約や支払いまで完結する賃貸住宅型サービスを提供するOYO TECHNOLOGY&HOSPITALITY JAPAN(東京都千代田区)もサブスクを活用。今年3月、首都圏を中心に始動した同社。入居者に対して、家事代行やカーシェアリングなど提携企業のサブスクサービスを入居後1カ月間無料で利用できるパスポートを提供。10月以降、名阪エリアへもサービス提供を拡大している。

いずれも物件取得に関してオーナーや不動産事業者との連携が必須であり、事業への共感と協力関係の醸成が今後も重要性を増していく。

賃貸の電子化、加速

国土交通省は10月に賃貸取引の重要事項説明書等の電磁的交付の社会実験を始めた。年内に社会実験自体は終わるが、既定路線ともいえる重要事項説明書等の電子化手続きは、宅建業法の改正を待ち、本格運用が目前に迫る。

既に不動産テック企業により、内見予約から入居申し込み、家賃保証会社や保険会社の申請、入居・更新契約までを電子化できるサービスが開発されている。賃貸取引を一気通貫する電子化では、家主や入居者の利便性も高まる。

電子化の先にこそ、より人にしかできない業務で差別化を図る時代が待っている。

梅の花

 

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